成分の一般的な特性について
多様な芳香性成分の生理学的、化学的効用について研究した。その結果は様々な状況に応じた精油の選択と、根拠のない精油の使用を避けるために役立つ。
【テルペン】程度の差はあれ、全ての精油に含まれるテルペンは最初に試験されるべきである。この研究が内服にはテルペンレス・エッセンスを用いるという選択に導くことになった。テルペンは軽く、沸点は比較的低く、希釈されたアルコールへの溶解度はかなり低い。水には不溶性であり、ベンゼンとエーテル、アセトンに溶解し、液体窒素石鹸への溶解度は非常に低い。テルペンは容易に酸化する、特に水があると著しい。自然界ではテルペンは芳香物質が商物の最上部の器官に上昇するに従って、徐々に酸化する。樹木から抽出されるエッセンスは葉のものより多くのテルペンを含有し、葉のエッセンスは、花よりテルペンを多く含む。良い例が、パイン(松)である。樹脂がテルペンと松やにのみを含むのに対して、葉はボルネオールとテルピネオール、そしてアルコールのエーテルを有するが、これらはピネンが酸化した物質である。テルペンは急速に酸化する。この特性は油とエッセンスの混合塗料に役立てられる。テレビン油は酸化しやすい製品(リノレインとゴム)に酸素を固定しツヤ仕上げを与える。酸化は結果的にオゾンを形成するため、重要となる。空中に蒸散されたテルペンの殺菌力はこの活性によるものである。テルペンは揮発性の空気消毒剤として用いることが可能だ。
ユーカリ・エッセンス成分の考察
実験結果は以下の通りである。
- ユーカリプトールはオゾン化されたものを除いて、成分の中で最も殺菌性が低い。
- テルペンはオゾンの源であり、ユーカリ・エッセンスで最も簡単にオゾン化する成分はフェランドレンとアロマデンドラールである。
- 薬局方の中に、ユーカリ・エッセンスのオゾン判定試験を含むことには価値がある。
芳香族アルコールの特性
アルコールはエッセンスのうちで最も数多く、豊富に含まれる成分である。テルペンより比重が高く、部分的には水に対して可溶性である。薄いアルコールによく溶け、濃いアルコールに全て溶解する。石鹸溶液にもよく溶ける。
ボルネオールに注目する。ボルネオ島産のDryobalanops由来のアルコールあるいはカンファーであり、ヨーロッパでは価値が失われている。ボルネオールにはメントールほど強い血管収縮作用はないが、毒性があり、さほどの強壮作用はない。日本のカンファーはケトンの一種でありボルネオールとは対極の特性を持つ。ボルネオールには、強壮作用・刺激作用・消毒作用がある、ケトン系カンファーには精神安定作用そして毒性がある。
ローズマリー・セージ・パイン・ファーのエッセンスはボルネオールとそのエーテルを含む。そのため、強い殺菌能があり、医薬的適用への価値を説明する。ローズマリーのエッセンスは、弛緩性消化不良に対する健胃作用として考えられる。
カザンはマラリアの発作に対して良い結果を得た。ブリスモレは『Essais sur les prearations galeniques』で刺激剤・強壮剤として挙げ、カンファー、シネオール、ピネン、カンフェンと共にボルネオールが含まれるためだとした。ローズマリーは駆虫剤と通経剤である。
セージについては、ファン・スヴィエテンは発熱時の発汗を抑えるのに推奨し、トルーソーとピドウーとグビエは回復の為の強壮剤として勧めた。シャプトーは万能薬だと考え、サレルノ医学校のように薬効を証明しようとした。
テルピネオールも多くのエッセンスに含まれる成分だが、生理学的活性に関しては、抱水テルピンと同様に用いられる。これには鬱滞除去作用があり、アメリカ人はそれを証明が必要な興味深い特性に起因するとした。テルピネオールはジュニパー精油にも含有量の多いテルペンと共に含有されるが、それがルッターがジュニパー精油をテレビン油と同じ範疇に当てはめた理由なのだろう。
リナロールはベルガモットやラベンダーのような多くの精油中にアルコールの形態、あるいはエステルとして見いだせる。オレンジ花のアブソリュート(ネロリ?)はグレゴワールの研究によって少量投与でも催眠作用を持つことがわかった。リナロールはメチルアントラニレートと共に検出され、それはリナロール単体よりも特別な作用の決定因子なのかもしれない。
万能薬として名高いクラリセージ精油も、その主成分はリナロールとアセテートで構成される。しかし、いまだその性質が未知である少量含有されている物質もクラリセージ精油の特有の働きを説明する特質があるのかもしれない。(ロバートティスランド解説:おそらくスクラレオールとスクラレオールオキシドのこと)
実験からリナロールとテルピネオール、ゲラニオールにはボルネオールよりもさらに効果的な麻酔作用があるようだとわかった。しかし実用的ではない。
『アロマテラピー』ルネ・モーリス・ガットフォセ(フレグランスジャーナル社)より
あくまで医療使用を目的としているようなので、投与が注射だったりするみたいです。