からだの豆知識|ウィリス動脈輪

1664年 英国の科学者トマス・ウィリス(1621~1675)は、脳底にある動脈輪について記述した。この動脈輪は、頭部へ流れる血液の環状交差点の役割を果たしている。頸部の左右2本の大きな動脈である頸動脈がこの動脈輪で合流し、その後、小さな血管に枝分かれする。枝分かれした小血管は、顔面と脳に栄養を与える。ウィリスがこの動脈輪を詳細に図解したことから、現在この構造は『ウィリス動脈輪』として知られている。

脳底部において、下垂体を取り囲むように位置しているウィリス動脈輪は、頸動脈と脳底動脈を前大脳動脈・中大脳動脈・後大脳動脈などの小さな動脈につなげ、これらの小動脈は脳のあらゆる部位に張り巡らされている。

ウィリス動脈輪は吻合血管と呼ばれ、幹となる血管が分岐したのち、再び合流する。ちょうど道路が環状交差点で合流するように、色々な血管がつながっている。

科学者たちは、16世紀にはこの動脈輪を観察していた。しかし、この動脈輪が血液の流れを導く際に重要な役割を果たしていることに初めて気が付いたのはウィリスであった。ウィリスは片側の頸動脈が完全に塞がれて機能しなくなっても人間は生きていけるということを示した。また、動物で片側の頸動脈に色素を注射すると、その色素は脳のすべての血管を染めることも示した。このことは、片側の頸動脈が物理的圧力によって狭窄したり、プラーク(脂肪沈着)によって塞がれたり、疾患や障害によって遮断されたりしても、この動脈輪によって血液が脳の両側に導かれることを証明した。

このようにして、脳には可能な限り十分な血液が供給されるようになっているのである。

『からだの教養365』文響社より(一部内容を書き換えています)

画像見ると、環状線の道路や地下鉄の路線図みたいですよね

解剖生理学を勉強していると

つくづく生命体って ”精密にできているもんだなぁ” と思います

でも損傷させたり塞いだりしないことが大切ですよね

年中無休で動いている ”自分自身” を

たまには意識して労わってあげましょう

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